有限会社島野商店 代表島野様

平面から立体へ。
職人の技と素材知識が生む、ぬいぐるみ製作の現場
ぬいぐるみの「材料」を扱う専門商社として昭和51年に創業し、素材の卸から製品製作まで幅広く手がける有限会社島野商店。代表の島野様に、国内ぬいぐるみ産業の変遷と、小ロット・高品質を支える技術へのこだわり、そして業界の未来について伺いました。
職人としての歩みと会社の成り立ち
── 貴社の歩みと、島野様のご担当・役割について教えてください。
うちは元々、ぬいぐるみの「材料」を扱う会社でした。ぬいぐるみメーカーやスリッパ業者に生地を卸す専門の会社だったんです。私自身もそうした素材の会社に10年ほど勤めてから独立し、いまは卸・メーカーのような役割を担っております。
当時は葛飾区周辺にも多くのぬいぐるみメーカーがあったのですが、20年ほど前から生産拠点が次々と中国へ移ってしまいました。国内のメーカーが減る中で、うちは素材の知識を活かして、製品の製作も少しずつ手がけるようになったんです。
「小ロット・高品質」を支える国内生産の強み
── 昭和51年創業ということで、もうすぐ50周年ですね。時代とともに求められるクオリティも変わってきたかと思いますが、大切にされていることは何でしょうか。
やはり「品質」です。いいものを作らないと、お客さんは離れてしまいます。最近は、1万個といった大量生産は中国で行うのが一般的ですが、100個単位の小ロットだと中国では受けてもらえません。そうした小ロットの注文に、高いクオリティとスピード感で応えられるのが、我々のような国内業者の強みです。

平面から立体を生み出す「型紙」の技術
── 製作におけるこだわりについて教えてください。クライアントからのデザイン案をどのように形にしているのでしょうか。
クライアントからは平面のイラストが送られてくることが多いのですが、それを立体にするための「型紙」作りが重要です。専属のデザイナーと相談しながら、綿を入れたときの膨らみ具合を計算して型紙を起こします。
例えば、動物や人型のキャラクターなども、平面のイメージをいかに忠実に立体化するかに心血を注いでいます。中に入れる綿の量や、生地の厚みによって表情が変わるため、何度もサンプルを作って調整します。
素材へのこだわりと「BP」の活用
── 弊社の素材「BP」を長年お使いいただいていますが、採用の決め手は何だったのでしょうか。
以前、浅草にあった別の業者から仕入れていたのですが、そこが廃業して困っていたときに清水商事さんを紹介してもらいました。かれこれ10年以上の付き合いになりますね。
「BP」は、キャラクターの「くちばし」や「目」「底板」など、適度な硬さと加工のしやすさが求められる箇所に最適です。他の素材では代えが効かない、ぬいぐるみ製作には欠かせない素材です。

これからの展望と業界の課題
── 2027年には50周年を迎えますが、今後の展望や新しくチャレンジしたいことはありますか。
正直なところ、後継者不足という大きな課題があります。この仕事はとにかく「素材の知識」が重要です。このイラストにはどの生地が合うか、この立体にはどの芯材がいいか、これらは長年の経験がないと判断できません。
最近は着ぐるみ製作に挑戦する若い女性職人が増えております。厳しい現場ですが、長く続けてほしいなと思います。
昔に比べて、アニメキャラクターなどの「平面的なデザイン」を立体にする依頼が増えました。昔ながらのリアルな動物のぬいぐるみとはまた違う難しさがありますが、蓄積してきた技術と信頼できる素材を組み合わせて、これからも納得のいくものを作っていきたいですね。

有限会社島野商店 代表 島野 惠
ぬいぐるみ素材を扱う専門商社にて10年間勤務し、素材の特性理解および仕入先との折衝・調達業務に従事。その後、昭和51年に素材卸売・製作管理を主軸とする島野商店を創業。
