シューズデザイナー 前田様

フランス語で「履く」を意味するブランド名、chausser(ショセ)。
シューズデザイナー前田洋一様が手掛けるこのブランドは、「ずっと愛着を持てる靴」がコンセプト。
創設25周年を迎えたブランド、その原点にあるものづくりへの想い、トラベルシューズの試み、そしてこれからの展望について伺いました。
ブランド「chausser」について
── ブランド「chausser」と工房のご紹介をお願いいたします。また、シューズデザイナーとして、前田様が日々どのような活動を行っているのかを教えてください。
chausserは2000年に立ち上げたブランドで、現在は私を含めスタッフ6名で運営しています。靴の専門学校を出て入社したスタッフもおり、皆でレディースとメンズのデザインを話し合いながら進めています。最終的に私が全体のデザインをまとめ上げています。生産はすべて外部の工場に委託しています。
── 以前インタビューを受けられた記事を拝見したところ、秋田と浅草に生産拠点があるそうですね。
はい。グッドイヤー製法は、秋田の工場で生産しています。一方で、ドレッシーな靴やセメント製法の靴は浅草で生産しています。



ロックウェルに影響を受けた創業時のデザイン哲学
── 創業時に大切にされていた想い、特にノーマン・ロックウェルの絵を参考にされたという部分について、現在もその想いは引き継がれていますか。
「chausser」立ち上げ時のコンセプトは、まさにロックウェルの絵がイメージの中心にありました。特に1930〜50年代のアメリカで描かれた人物の靴に強い印象を受けました。それをもとにコードバンのブーツなどを作ったのがはじまりで、その想いは今に受け継がれています。
── レディースで、木型からメンズライクなものを作るのは、当時珍しかったのではないでしょうか。
そうですね。当時は珍しかったと思います。

清水商事との出会いと、トラベルシューズ誕生の裏側
── 清水商事との出会いのきっかけについて教えてください。
以前、バッグ製作を行っていた時期にレザーフェアで出会い、不織布の巾着をお願いしたのが最初でした。現在は「トラベルシューズ」のシューズバッグをお願いしています。
── シューズバッグはエアチケットをイメージされたとのことですが、ブランドとしての付加価値やユーザーに届けたい体験について教えてください。
コンセプトは「旅行」です。靴だけでなく、ソールや箱、パッケージ全体をデザインしています。ソールには世界地図をモチーフにした意匠を施し、シューズバッグにもエアチケットのデザインを取り入れています。
また、納品時のダンボール箱も、白地にデザインを入れたオリジナルのものを作りました。そのダンボール箱は、ポップアップイベントなどで什器としても使っています。トラベルシューズという商品を、靴だけでなく、全体的なイメージとして遊び心を持って展開することで、お客様に付加価値を提供したいと考えています。


資材調達の課題と、変わりゆくものづくり環境
── ものづくりをされる中で、「こんな副資材やサービスがあったらいいな」と感じることはありますか。
新しいものよりも、「これまで使えていたものが使えなくなっている」ことが課題です。革の原皮加工や工場の廃業が増えており、毎シーズンのように値上げも続いています。「これまで通りできること」を維持していくことの難しさを強く感じています。
── 長く履いてほしいというコンセプトに対し、環境への配慮は意識されていますか。
靴は多くのパーツで構成されており、自然に還る素材だけを使うのは難しい。その代わりに「長く履いてもらう」ことを重視しています。グッドイヤー製法で10年、20年と履ける靴づくりがサステナブルに繋がると考えています。
25周年を迎えて見える、これからの「chausser」
── 今後の方向性や新しい取り組みについて教えてください。
コロナ以降、お客様の購買スタイルが大きく変化したため、遅ればせながらオンラインサイトを強化しています。トラベルシューズは比較的お求めやすい価格帯ですので、地方にお住まいの方もオンラインストアで購入いただけるようにしています。また、今年から百貨店のポップアップにも参加しています。スタッフと2名で伺い、お客様と直接お話しする機会を大切にしています。
── ものづくりに携わる方々へ、メッセージをお願いします。
日本ではものづくりが難しくなっている実感があります。だからこそ「横の連携」を大切にし、職人同士やデザイナー間で情報を共有しています。業界全体で支え合うことが、良いものづくりを続ける鍵だと思います。

chausser デザイナー 前田 洋一
2000年よりブランド「chausser」を立ち上げ、「ずっと愛着を持てる靴」をコンセプトに、時を重ねるほどに魅力が深まるシューズづくりを続けている。

